第三章 人間と霊の階層
スウェーデンボルグの考えた人間と霊の階層構造
スウェーデンボルグの考えた人間と霊の階層構造

 霊とは、自然に属するものでも、さりとて自然と隔絶されたものでもない。人間の魂の容れものとしての肉体とは異なるが、霊界にも霊体をもった生きた霊が存在する。そして、類友の法則に準じていろいろな階層に住んでいる霊たちがいる。

人間の死と霊界

    スウェーデンボルグは、真の意味において肉体の死は何かについて次のようにシンプルに論じている。

 

    なんらかの疾病や事故によって霊がその肉体と連係ができない状況に陥ると、分離すなわち死が訪れる。そのとき照応(大宇宙:大いなる存在と小宇宙の人間が呼応すること)が起こり連結が切り離され、関係性が消滅する。他に「シルバーコード」の消滅とも言われている。その消滅は呼吸が停止するときではなく、心臓のたゆまぬ拍動が停止するときに起こる。なぜなら、窒息や気を失った場合や、母胎に宿る胎児の生命の状態から明らかなように、心臓が動いているかぎり、愛はその生命の熱として、身体に影響を及ぼし続けている。

 

    この引用から明らかなように、彼は心臓の拍動の停止をもって、肉体の死と捉えている。スウェーデンボルグの立場から死を俯瞰(ふかん)するならば、現代の臓器移植のために脳死を死と判断することの是非も、一つの問題提起となるだろう。

霊界にはこの世のものがすべてある

    肉体を脱いだ霊的で本質にめざめた内的な人間、つまり霊が生きる世界が霊界と呼ばれる。そこには自然界とたがわぬ、太陽、月、星、大空、そびえ立つ山、谷、平原、湖沼、川がある。草、花、木、木立、森など植物界の一切のものと、獣、鳥、魚、虫など動物界の一切のものとがある。

 

 人間は霊的身体にさまざまな色や形の衣服を着た姿で、町や公園や田舎町を行き交い、社会も形成している。仕事もあり、公共の社交場もあり、くつろぐカフェもあるし、政治もある。

 霊界には物質的世界に存在するものはすべて網羅されているのだ。

    しかし霊界と自然界は、見かけは似ていても本質的な違いがある。霊界にあるものはすべて霊的なものであるため、自然界にあるもののように固定してはいない。これは霊には独自の波動(sphere,スフィアと言う)があるので、各人の霊界での立場は自らの波動で霊的領域を形成している。この理由により各自のまわりには、その思いに応じて霊的な事象が生み出されている。霊のまわりに展開する事物はすべてその霊の内的霊性から発している。

 

   そのため、ある人間、もしくは人間の集団(波動が一致する者どうし)がある場所から立ち去ってどこか他所へ移動すると、その周囲の事象もすべて変化してしまう。

    けれど、霊界で人間が生み出す環境は決して幻影ではなく、霊的な自然物なのだ。スウェーデンボルグは、これを「実在的な外観」と命名している。

霊界には類友の法則がある

   この世で人間は、自分の思いや願望を一瞬で自らの周囲に現すことはできない。空間的・時間的に厳しい制約を受けるからだ。たとえば、自分で設計した思い通りの家が欲しいとする。だが、この世では、心に描いた家が実際に建つには数か月は要するのである。または、亡くなった母や父に無性に会いたいとする。でも、この世では時空の制約があって、瞬時に会えることはない。

   霊界には本質的に空間も時間もない。霊界には空間に代わって生命の「状態」があり、時間に代わって生命の「状態の変化」がある。そのため、生命の「状態である霊の内部の想念や感情が、霊自身の周囲に、その想念や感情に照応(大宇宙:大いなる存在と小宇宙の人間が呼応すること)した躍動感あふれる生き生きとした霊的な自然物を一瞬にして生成する。逆に内部の生命の「状態の変化」が起これば、その外側の事物も変化するか消滅してしまう。

    こうしたことは、個人でも集団でも同じように起こる。ある共同体が現れたり、移動したり、消えたりする。 「霊界で起こる移動は、すべて内部の状態の変化に由来し、移動は状態の変化にほかならない。場所の接近は類友の法則、つまり同じような人間性の類似性を表し、隔たりは性質の違う非類似性をいう」

    したがって、似た状態にあれば近くにあり、相違した状態にあれば自然と離れて行く。

霊界では人間界での個性を失うことなく全体に奉仕する

    霊界は広大無辺の生命感あふれる異次元宇宙である。人類の誕生以来、地上で生まれて死んだすべての人間がここに生きている。霊界全体が理想的な形をとるときには、ひとりの人間の形となるという。それは「最大にして神的な人間」である。

    霊界における各社会は、ひとりの人間、あるいはひとつの人体のように有機的な全体の一部であり、バラバラになった部分ではなく、全体にとって不可欠な部分なのである。表現するなら、オーケストラの演奏は個々の楽器の個性を失うことなく美しく精妙なハーモニーを奏でる。まさしく、全体は部分、部分は全体である。部分は自らの性質を保持したまま全体に奉仕し、全体は常に部分に愛の光を注いでいる。仏教で言うところの利他の精神が見て取れる。 

 霊界は、人間の心が成層的な構造を有するように、構造は階層を成している。死後の世界は、人間の宗教的・道徳的性格を縦軸とし、個性や好みを横軸として幾層にも分かれている。

 

霊界は天界と地獄に分離している
霊界は天界と地獄に分離している

 類は類を呼び、類が違えば反発するので、善と悪は基本的に分離している。したがって、霊界は天界と地獄に分離している。天界と地獄との中間地帯もあり、そこは「霊たちの世界」と呼ばれる。