私は人びとの通りすぎてゆく小さな館(やかた)です。
私はストックホルムの主人の庭に建っていました。
彼の天使たちは彼らのハーモニーで私を満たし、
私の見守るなかで霊的な賜物は栄えました。
巨大な探究者、預言者、哲人だった彼は、
私の質素な小屋を家として使ってくれました。
ここで彼は天界の栄光を見、
そしてここに新しいエルサレムは建設されたのです。
いまはその霊が立ち去り、私は殻だけとなりました。
いま私は悲しく見捨てられて立っています。
けれども、神がわれらのスウェーデンボルグのもとを訪れたときには、竪琴とシンバルの楽の音が私を満ちあふれさせたのです。
J・グルベリの詩
「天使を見せて!」とスウェーデンボルグに頼んだ子供がいた。それは彼の隣家の少女、グレタ・アスクボームだった。「よし、よし」
とスウェーデンボルグは彼女を玄関に招き入れ、そこにあったカーテンの掛けられた姿見の前に立たせた。
「さあ、天使が現れるよ」
と彼は少女に言った。そして姿見のカーテンをさっと引いたのである。
少女は自分の姿が天使だと知って喜んだ。
スウェーデンボルグの住居跡に近い草深い公園に、彼の胸像が建っている。その台座にはめこまれた青銅製の浮き彫りは、このときの様子を表している。
鏡に写った自分を見つめている少女が後ろ向きに立っているのが分かる。